特集 耳鼻咽喉科MEの進歩
VI.観察記録
中耳針状鏡
野村 恭也
1
Yasuya Nomura
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科
pp.845-848
発行日 1981年10月20日
Published Date 1981/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209332
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
鼓室はわれわれ耳鼻咽喉科医にとっては,日常臨床において非常に関係の深い部位耳であるにもかかわらず,鼓膜が存在するために観察が不可能である。穿孔がある鼓膜では,ここを通して鼓室を観察しようとする試みがあったが,何れも実用の域に至らなかった。ここに述べる中耳針状鏡によってはじめて鼓室の観察が十分に行えるようになったといってよい1,2)。
中耳針状鏡は,直視型と側視型に大別される。この中間の斜視型も作製されている。
鼓膜に穿孔のある場合は手術用の顕微鏡を用いた方がその大きさに相当した鼓室の部分を拡大し,鮮明な像として観察できる。ただし直視型針状鏡を用いると鼓室内に入れられるため鼓膜穿孔の大きさよりもさらに周辺の部分までが観察されることになり,また穿孔のない場合は鼓膜切開を行って挿入すれば鼓室の様子を観察することができる。また外耳道が狭窄している場合も針状鏡の太さの間隔があれば,鼓膜,あるいは症例によっては鼓室までが観察できる。しかしながら,針状鏡が中耳観察に役立つのは斜視型ないしは側視型の方であろう。本稿では側視型針状鏡につき,その使用法などを述べてみたい。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.