鏡下咡語
臨床検査雑感
平野 実
1
1久留米大学
pp.990-991
発行日 1979年11月20日
Published Date 1979/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209002
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「鏡下咡語」の執筆を依頼されたのが日本を発つ数日前,締切日が帰国予定日とほぼ同じ頃なので,原稿用紙を荷物に入れて日本を発つた。6月10日にNew Yorkに着いて,1週間「Care ofProfessional Voice」と題するSymposiumに参加,以後当地の研究室の相談役ということで現在New Yorkを中心に仕事をしている。
先日,アメリカのある言語治療士と話しをしているとき,喉頭筋の筋電図検査のことが話題になつた。私がわれわれの大学では声帯の運動障害がある患者には,原則としてルチンに筋電図検査を行なうことにしている,と説明したら,彼女がそれによつて患者はどういう恩恵を受けるか,と尋ねてきた。反回神経麻痺に対する治療法,とくに外科的治療の選択には予後を推定する必要があること,予後の推定には筋電図検査が有用なことを説明した。もちろん筋電図検査は反回神経麻痺における病態の把握にも有用であり,日本における最近約20年間の筋電図を用いた臨床的研究(主に東大,京府医大,広島大,久留米大)が,反回神経麻痺に関する病態生理学的観点を大きく変えたことはご承知の通りである。このような臨床的研究は将来の患者には恩恵をもたらすが,検査が行なわれたその患者には,直接の恩恵を与えないこともある。
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