増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅵ.メディカルエッセイ
雑感
香川 征
1
1徳島大学医学部泌尿器科
pp.190
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902584
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私が医療保険について初めて考えさせられたのは,透析療法に出会った時でした。大学卒業後2年目の昭和45年に,私は愛媛県立中央病院で初めて透析療法を経験しました。その当時,四国で透析療法が可能な施設は徳島大学医学部泌尿器科と愛媛県立中央病院以外にはありませんでした。もちろん透析療法は始まったばかりで,当然のことながら今から思えば不十分なことばかりでした。その当時,国民健康保険の家族は5割の自己負担があり,経済的理由で透析を断念せざるを得なかった患者さんが少なからずいました。また透析治療が長引けば,やむをえずみかん畑や水田を売り払いながら透析を続けた人もみてきました。当時医師になりたての私にはそれがとても重苦しくのしかかっていました。
しかし,今やわが国の透析医療は世界でもトップクラスにあり,まさしく隔世の感があります。そして保険制度の改革により経済的理由で透析ができない人もいなくなり,その当時高齢を理由に透析しなかった人々も現在では透析が行われています。しかし,今では透析医療は医療財政を圧迫しているとしてその削減策が考えられ,一部は実行に移されています。現在,厚生省は根本的医療改革に心血を注いでいますが,どんな案が出ても首を傾げるようなものばかりです。
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