扉
雑感
波出石 弘
1
Hiromu HADEISHI
1
1亀田総合病院脳神経外科
pp.843-844
発行日 2008年10月10日
Published Date 2008/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100811
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千葉県の南のこの病院に勤務し2年が経とうとしている.波の音で目覚め,200歩で職場に着き,12月には菜の花と水仙が咲く雪のない冬.それまでの東北での生活が嘘のようである.永く在職した秋田県立脳血管研究センターでは,脳神経外科医として,また臨床研究にかかわる者としての基本的な技術と態度を学んだ.大学卒業時,「心配するな.医者になったら米の飯とお天道様は付いてくるじゃ.好きなことせ~よ!」と先輩に励まされたが,明確な進路を持たず,絶対好きになれなかった脳神経外科をとりあえず2年間勉強して来いと言われ,フラフラとたどり着いた秋田であった.しかしそこは大学と異なる論理で運営される臨床の場で,とにかく手術が好きな脳神経外科医が沢山集まっていた.正直なところ大学医局のヒエラルキーが嫌いでうろうろしていた私には,最初からなんとなく落ち着ける場所でもあった.派遣した医局(救急医学)へ早々とフリーエージェント宣言したのは,少しずつ知識と技術が身に付く自分を確認できることの喜びを知ったからである.医局の大気圏外に出るのは少し勇気が要ったが,ひと所に腰を落ちつけて学ぶことができるのもありがたかった.しかし,何の不満もない職場ではあったが,20年も同じ所に居ると腰の辺りがムズムズしてくる.「転がる石に苔生えず」という諺があるが,50歳を前にもうひと転がりしてみたいと思い,不思議なご縁に身を委ねての今回の異動であった.
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