扉
雑感
山本 勇夫
1
1横浜市立大学脳神経外科
pp.496-497
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901730
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近年学問が益々専門化,細分化し,自分の専門領域以外はほとんど理解できないものとなり,ややもする“専門バカ”に甘んじる風潮があることも否めません.われわれ医師も社会的責任が大きくなるにつれ,このような細分化された知識や知性のみでは対応が困難な時代になってきているのも事実です.そこで20世紀も終わろうとしている現在,学問の専門化,細分化と同時に,統合,融合を真剣に考え,専門分野のみに閉じこもる時代ではないという意識改革も必要ではないでしょうか.
まず教育制度からして,大学入試のために高校入学,いや時には中学時代から学生を文系と,理系に分け,大多数の学生はその時点で文系は理数科目を,理系は国語や,社会科などから遠ざかるようになります.また医学部へ入学すると,6年間の教育内容が年々専門教育にウエイトがかかり,その分教養課程が圧縮されているのが現状です.今回われわれの大学で発生した手術患者の取り違え事故はいくつかの不注意が重なったことも原因の1つですが,医療の原点である“全人的医療”を軽視する傾向があったことが,この事故の要因として大きく関与していたことを深く反省しております.その意味で昨年10月大学審議会から報告された「21世紀の大学像と今後の改革方策について」で述べられている“学問のすそ野を広げ,様々な角度から物事を見ることのできる能力や,自主的・総合的に考え,適格に判断する能力,豊かな人間性を養い,自分の知識や人生を社会との関係で位置づけることのできる人材を育てる”という教養教育の充実を,今回の反省をふまえ,横浜から発進しなければならない義務を感じております.
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