創刊50周年記念特集 今日の耳鼻咽喉科/治療のコツと全身管理
鼻—症候と疾患
上顎癌
内田 正興
1
1癌研究会附属病院頭頸科
pp.792-793
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208743
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鼻副鼻腔悪性腫瘍の大半を占める上顎洞癌の治療法は,混沌としており現在に至るも適正な治療法を求めて探究が続けられている現状である。したがつて標準的な「治療のコツ」を述べることは不可能であるが,本稿の前半で最近に至るまでの本邦における治療方針の変遷を記し,後半に筆者らの行なつている治療法の詳細を述べることによつて責を果したい。
上顎洞癌の治療法は現在に至るも流動的で,極端な言い方をすれば各施設毎に独自の治療方針にのつとつて治療を行なつている現状であろう。この治療法の変化は,上顎洞癌の治療に動脈内注入療法(以下動注と略記)が導入されてからのことである。それは本邦においては鈴木(1964)の各種頭頸部癌に対する動注の報告に端を発し,佐藤(1966),三宅ら(1971)ら上顎洞癌に対する応用が発表され,放射線,手術との併用に効果があることが実証された。特に佐藤は,動注を併用した場合,手術侵襲の軽減と照射線量のひきさげを行なつても,動注,照射,手術の三者の巧みな配量によつては根治治療が可能であることを強調した。この三者併用の治療法の骨子は,照射と動注を併用しつつ,その期間中を通じて頻回の局所清掃を執拗に反復し,病巣を徐々に削りとつていくものであつた。つまり本法は,従来の術前照射→手術という概念ではなく,照射,動注,手術操作が並列的に三位一体となつて反復されるところに卓抜な着想があつた訳である。
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