創刊50周年記念特集 今日の耳鼻咽喉科/治療のコツと全身管理
鼻—症候と疾患
顔面損傷
田嶋 定夫
1
1慶応義塾大学医学部形成外科
pp.794-795
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208744
- 有料閲覧
- 文献概要
外鼻軟部損傷の治療 外鼻下1/3の皮膚は付属器が豊富であるため,他部の皮膚損傷にくらべて留意すべき点がいくつかある。いわゆる形成外科的皮膚縫合のように皮下剥離,真皮縫合を行なうと創縁の挫滅,発赤,創感染を招きやすい。そのため最小限のデブリードマンを行なつたあとはナイロン糸により皮膚縫合だけを行なつた方が得策である。縫合糸の緊張が強いと術後数日で創発赤,浸軟を招きやすい。過緊張のときは皮膚直下ではなく,筋層のレベルで剥離を行ない,減張縫合を施す。他の部位の縫合創と異なり,創縁に段ちがいがあると,その変形は永続する傾向にあることも覚悟しなければならない。小さな剥皮創が点在することの多いフロントガラス損傷では,愛護的に縫合したあとで二次的に皮膚面の小膨隆に対してabrasionを行なう方針とする。付属器が豊富なことが利点となつて,多少深めに削つても表皮化は良好である。鼻孔縁にかかる創は鼻孔縁にくびれのないように縫合を確実に行なわないと,目立つ変形を残しやすい。鼻腔に貫通する横断創は,鼻腔内も確実に縫合し,鼻軟骨,皮膚縫合と三層に処置することが必要である。縫合後はネラトンまたはタンポンにより鼻腔内を確保し,さらに術後約3ヵ月間は鼻腔リティナーの着用を励行すれば万全である。鼻腔内の縫合を怠るとSynechienを招きやすく,とくに輪切り型損傷ではしばしば高度の鼻腔狭窄を招きやすい。
外鼻上半分の皮膚損傷の処置は一般の部位と異なる点は少ないが,鼻根部では表情筋の走行が集中するためか,創痕はやや陥凹しやすい傾向にある。確実な真皮縫合が必要である。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.