特集 耳鼻咽喉科診療の経験と批判
上顎癌
河田 政一
1
1福岡逓信病院
pp.795-800
発行日 1970年10月20日
Published Date 1970/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207537
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Ⅰ.まえがき
日本における頭頸部腫瘍症例の中で上顎癌の占める比率は一般にかなり大きいのは周知であるがかつて九大耳鼻科で調査したところでは戦後16年間の入院患者総数10,707名のうちもつとも多かつた喉頭癌の482名につぐのが上顎癌の382名であり,それに続いて食道癌182名,口腔咽頭癌149名,舌癌87名の順となつている。喉頭癌に対し上顎癌はほぼ4:3の比でやや少ない。これは国内地域的に多少の差異はあつても原則的にはいえるところであろうと思う。
近年治療法の質的,量的向上とその運用面の進歩などにより喉頭癌の場合は治癒率を大幅に好転せしめることができたのである。ところが上顎癌の場合はまだ必ずしもその域に到らない。再発例はもとより徹底的拡大摘除の場合といえども依然として予後不良例はなお相当に多いものと見られる。
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