総説
喉頭癌
佐藤 武男
1
1熊本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.331-342
発行日 1978年5月20日
Published Date 1978/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208648
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I.緒言
実験動物学および獣医学からの情報では自然発生喉頭癌はきわめて稀であるので,著者はまず喉頭癌は人間の癌であることを主張したい。人間の癌であるからには,喉頭癌発症には人間としての生態が深くかかわっていることが容易に理解されよう。
また,喉頭癌に関する歴史的展望を行なつてみると忘れてはならない数名の人物がある。発癌に関してはColumbus(1451〜1506)のアメリカ大陸の発見(1492)によるタバコの普及であり,16世紀後半になってタバコ栽培が全世界に行き渡るのである。その結果,喉頭癌が特にラテン諸国を中心に急増したものと推測される。病理学に関しては18世紀になつてPaduaのMorgagni(1682〜1771)が喉頭癌の剖検例2例を発表(1761)した。彼は近代病理解剖学の父である。診断学の進歩はGarcia(1805〜1906)の喉頭鏡の発見(1854)に始まる。その結果,喉頭癌の医学的記載が行なわれるようになつたのである。治療面ではBillroth(1829〜1894)の喉頭全摘出術の成功(1873)を忘れてはならない。また診断と治療における進歩の歴史において忘れてはならない事件としてMackenzie(1837〜1892)のFriedrich三世に対する診断の失敗(1887)がある。
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