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I.緒言
後藤1)は,鼓室成形術を不成功に導く要因として,具体的に9項目を挙げている。しかしその大部分は,直接手術あるいはそれに関係のある事項によつて占められている。事実術後も耳漏が停止せず,かえつて増量するもの,あるいはまた聴力の改善が少しもみられないという症例の多くは,適応や病変の処理あるいは手術手技などに誤りや不手際があつたものである。さらに術後の合併症なども,ほとんどがこれによるといわれる。したがつて鼓室成形術の成否に関し,これまで術後管理の占める位置,役割というものは,きわめて微微たるものであつた。僅かに術後,タンポンの交換や,その際の清拭において注意が換起されていたに過ぎない。一般には,創傷処置と同様,術後の感染予防に主眼がおかれていた。
ところで最近の鼓室成形術をみると,外耳道後壁が保存されるようになつて,後療法は随分と楽になつたが,反面遅発性に生ずる合併症も,少なからずみうけられるようになつた。もちろんこれは,術式とそれに伴う術中の処置に問題があつて生ずるものではあるが,もし術後の管理が行き届き,そのような障害を早目に発見することができれば,ただちに処置することで,あるいは合併症を未然に防ぎ得た症例が多くあつたかも知れない。逆にまた術後もなお耳漏の続く症例であつても,適切な全身管理と治療で,あるいは耳漏の停止がみられたという例が少なくなかつたかも知れない。このように術後の状態を術後管理の立場から今一度見直してみると,意外に見過ごされていた管理上の手落ちが発見でき,さらにそれから治癒遷延の要因を探る端緒が得られたかも知れない。そうなれば,鼓室成形術の成否に関し,予後の面から術後管理の占める位置,役割というものは,決して微々たるものではないということができよう。
If the postoperative course of the tympanoplasty becomes complicated by infection of the external ear or by such a remote area as the upper respiratory tract, allergic rhinitis, a complete healing of the ear would be interfered with a break-down of the tympanic graft.
Other sourses of this interference are development of postoperative cholesteatoma and lateral healing of the graft.
In order to avoid these complication it is essential that the canal wall be watched with institution of an early treatment in cases of complications.
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