鏡下耳語
当世母親気質
渡辺 昭
pp.344-345
発行日 1974年5月20日
Published Date 1974/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208066
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開業してはや8年になる。昨年の忘年会で新規に開業された先生と同席した折に,急性中耳炎で治療中,「カゼをひいたので,小児科へ行きます」という母親が多いと,くどかれておられた。私の場合も開業3年間は同じようにいわれて,頭にきたものである。もうそのような患者は受診しなくなつたが,そのかわり戦前と戦後の母親の気質に大変な違いがあることに気付いた。
世の中の生活方式や考え方が変つたことと,核家族になつたため,母親は経験豊かな人々からの教えを受けることができなくなつた。昔は軽い病気は安静に寝て,粥や葛湯で治したものである。田舎の祖父母から都会の子供はどうして弱いのかと叱られるのですが,と屡々相談される。「テレビと自動車と甘い嗜好品のためだよ」と,何百回も繰返したことをまた繰返す。
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