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Ⅰ.緒言
従来の鼓室成形術では,削開した乳突腔を外耳道に広く交通させた腔として残してきた。それ故,術後,乳突腔に表皮化不良,痂皮形成,皮膚炎などが惹起し,不快な後遺症1)2)3)を形成してくる。これら不快な後遺症を除去するため,種々の術式が,諸氏によつて考案されてきた。
まず,C. Jansen4)5)6),内藤7)8)らによつて,骨部外耳道を保存するmeatotympanoplastyなる術式が発表された。
他方,この方法では,術時における病変部の観察および清拭が不十分であるとして,骨橋および外耳道後壁を除去し,乳突部を種々の組織で充填する方法が行なわれてきた。すなわち,Rambo9)10)らは,有茎の側頭筋で充填をはかつた。さらに,有茎骨膜,自家骨片,脂肪組織の他,アクリルなどの人工材料も充填物質として使用されている。
これらは,いずれも外耳道皮膚が完全に保存されている場合の術式である。しかしながら,外耳道皮膚の欠損(全または一部),すなわち,再手術例および仮性真珠腫などで,同時に骨部外耳道後壁の欠損している症例では,人工骨橋の作成とともに外耳道成形を行なわなければならない。
私どもは,過去2年間に亘り,骨部外耳道後壁とともに,外耳道皮膚の欠損した50症例を対象として,脱蛋白幼牛骨(Kiel bone)によつて人工骨橋を形成し,さらに自家筋膜を用いて外耳道形成を行なつてきた。この際乳突腔は,Kiel boneによつて充填している。
本論文では,かかるmeatotympanoplastyの術式および術後成績について述べるとともに,若干の考察を加えて報告する次第である。
Tympanoplasty was given to 50 cases with the use of the Kiel bone. The artificial bridge was formed with the Kiel bone covered with the fascia. The mastoid cavity was filled with the Kiel bone fragments and covered with the fascia to reconstruct the posterior wall of the external auditory canal.
Postoperative data showed good results in most of the cases. Regeneration was observed around the Kiel bone histopathologically.
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