特集 最近の顔面神経障害の基礎と臨床
顔面神経障害の保存的治療
玉川 鉄雄
1
1東京大学医学部物療内科
pp.767-774
発行日 1971年10月20日
Published Date 1971/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207694
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.まえがき
われわれが日常診療する顔面神経麻痺の多くは末梢性のもので,その大部分はいわゆるベル麻痺である。参考までに,ここ約10年間における顔面神経麻痺の病因別および発生月別,年齢別表を第1表に示しておく。したがつて,ここに述べる保存療法は,これらの患者を対象にした,幾多の臨床的研究や観察に基づいて,現在われわれの外来で行なつている方法であるから,その性質上ベル麻痺を中心に述べることになる。また,悪性腫瘍などの特殊の場合を除いては,ベル麻痺以外の場合でも,その治療法は同じであるとご理解戴きたい。末梢神経麻痺の治療でもつとも大切なことは,その神経が変性を起こしているか否かを決定することである。なぜなら,変性の有無によつて,その予後はもちろん,治療法も大きく左右されるからである。したがつて,第一義的の保存療法は神経変性の予防にある。また,一般に中枢性の麻痺では,その末梢神経は健全であると考えられるから,もちろん変性は認められない。いずれにしろ,その保存療法は薬物療法のみでは不十分で,その主体はむしろ理学療法にあると考えている。ところが,一般に,医師でさえも,理学療法即マッサージおよび低周波通電と理解している程度にすぎない現況である。しかし,神経の変性発生予防については,現在のところ薬物療法に求める以外にないようである。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.