特集 最近の顔面神経障害の基礎と臨床
脳疾患と顔面神経障害
神尾 友和
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.731-736
発行日 1971年10月20日
Published Date 1971/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207690
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.緒言
顔面神経の主なる障害には麻痺症状としての顔面神経麻痺と刺激症状としての顔面痙攣,口周線維性振戦,膝状神経痛が挙げられるが,脳疾患によつておこる顔面神経障害では顔面神経麻痺がもつとも多いので,ここでは特に脳疾患と顔面神経麻痺との関連性について述べる。
顔面神経麻痺(以下顔神麻痺と略す)は麻痺の程度,あるいは麻痺と合併した種々の症状により神経け科,物療内科,脳外科,耳鼻科,発成外科などの各科の日常診療でし帽しば遭遇するが,それらの多くは末梢性顔神麻痺であり中枢性顔神麻痺は比較的少ないと言われている。このことは顔神麻痺についての内外文献の統計的観察からもBellの麻痺(本態性,特発性を含む)およひHunt症候群が30〜80%の高率を示していることからも明白である1)2)3)4)5)。
さて,脳疾患によつておこる顔神麻痺には中枢性顔神麻痺を呈することもあり,また末梢性顔神麻痺を呈することもあるが,これは顔面神経の解剖からも当然である。顔神麻痺を初め,一般に神経系疾患の診断は,その解剖を明確にすることにより容易となる。以下,顔面神経の中枢における解剖,顔面神経障害をおこす脳疾患および顔面神経障害の局在診断について述べる。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.