特集 最近の顔面神経障害の基礎と臨床
顏面神経障害における味覚検査とその意義
冨田 寬
1
1日本大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.757-765
発行日 1971年10月20日
Published Date 1971/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207693
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Ⅰ.味覚検査の特殊性
味覚の検査は,従来日常の臨床ではあまり行なわれていない検査法である。その主たる原因は3つある。第一は,味覚障害を主訴として来院する患者が少ないということ。第二に,従来の砂糖や食塩の溶液による味覚検査を行なつてみても,不明確な答を得ることが多く,面倒な手順や長い検査時間をかける意味がないということ。第三にこれがもつとも大きな理由と考えるが,味覚検査による鑑別診断の可能性,いいかえれば味覚検査の価値が十分知られていないことによる。
われわれ耳鼻科医は,中耳の手術の際に,舌の前半の味覚を司る鼓索神経を傷つけることが多いのであるが,術後,特に質問しなければ,患者から味覚異常を訴えられることはまずない。Feldmannらは,一側の鼓索神経機能を欠除する約200例の患者について調査した結果,積極的に味覚障害を訴えたものは1例もなく,質問により初めて約10%が味覚異常を意識していたと報告している1)。
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