薬剤
速効性全身麻酔剤Ketalarの耳鼻咽喉科領域における使用経験
繁 英一
1
,
寺山 吉彦
1
,
坂本 毅
2
,
橋本 博
3
,
山本 一男
4
1北海道大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2札幌北辰病院耳鼻咽喉科
3札幌北辰病院麻酔科
4札幌市立病院耳鼻咽喉科
pp.709-716
発行日 1971年9月20日
Published Date 1971/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207687
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Ⅰ.緒言
耳鼻咽喉科領域における手術は,通常大手術を除き局所麻酔下に行なわれるが,時には疼痛のきわめて強い部位の侵襲や疼痛に敏感な患者,乳幼児に対して,全身麻酔を短時間,簡単に施行したいことがある。たとえば新鮮鼻骨骨折整復のごとく,短時間で終了するが,全身麻酔が望ましい場合である。かかる目的に対して,従来静脈麻酔や吸入麻酔などが使われてきたが,鎮痛作用や副作用の点でまだ十分満足できるものはなく,広汎な普及に至つていない。最近,Greifenstein1)らにより,呼吸および循環系の抑制が少なく,強力な鎮痛作用を有する新静脈麻酔剤,phencyclidine hydrochlorideが発表され,その後McCarthy2)らは改良を重ねて,2-(O-Chlorophenyl)-2-methylamino cyclohexanone hydrochloride(Ketalar)を開発した。さらにDomino3)らはその臨床的観察より,本剤は,脳における抑制が各部分により程度が異なり,一様でなく,そのため求心性impulseの脳における連合を妨げることにより,疼痛感覚を欠除させる特異的鎮痛作用を有すると考え,解離性麻酔剤と,呼ぶことを提唱した。本剤の化学構造式は第1図に示すごとくである。1966年以来,本邦でも,麻酔科を中心として多くの科で使われ,その臨床使用経験が報告されている。しかし,耳鼻咽喉科領域における報告はまだ抄録以外みられない。このたびわれわれは,本剤を耳鼻咽喉科領域の手術および検査患者47例に使用したので,その結果を報告し,ご参考に供する次第である。
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