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耳鼻咽喉科領域手術に対する止血剤タコスチプタンの使用経験
大沢 林之助
1
,
中村 正彌
1
,
須賀 秋男
1
1東京逓信病院耳鼻咽喉科
pp.229-232
発行日 1959年3月20日
Published Date 1959/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202212
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まえがき
止血剤は凝血機転を促進するものと血管壁を強化するものとに大別出来ると考えられる。血液凝固機序に関しては,先ず血小板が前壊してThromboplastinogenaseが放出され血漿中のThromboplastinogenに作用してThrombo-Plastinを形成する。Thromboplastinは血漿中のprothrombinに作用してThrombinの形成となり,Thrombinが或る量に達すると血漿中のFibrinogenはFibrinに変化して血液は凝固すると考えられている。ところが従来は,Thrombin製剤或はThromboplastin製剤は有効量と危険量とが極めて接近している等の点から局所使用以外は使用が困難であつた。然るに最近Schock(1950)によつて作られたThromboplastin製剤タコスチプタン(Tachostyptan)は,牛脳髄を処理して作製されたもので抗原性がなく,血栓形成等の副作用もなく而も血友病或は血小板減少性紫斑病のような血液疾患に対しても有効であることが,既に報告されており,従来の止血剤にみられない特色を有している。耳鼻咽喉科領域に於いては種々の特異性から,出血に対しては常に強い関心が払われており,最近優れた止血剤が各種登場したにも拘わらず,なお十分ではなく更に異つた止血機転を有する止血剤の出現が強く要望されている現況である。
今回住友化学より新止血剤,タコスチプタンの試供を受け主として扁桃摘出術及び,上顎洞根治手術時の出血防止に使用し,併せて,出血時間及び凝固時間の変化を観察したので,ここに報告する。
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