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近頃卒後研修の問題についての論議が喧ましい。去る8月31日より9月2日にわたつて仙台において開催された第71回日本耳鼻咽喉科学会総会学術講演会においてもパネルディスカッションとして「耳鼻咽喉科卒後教育」の問題がとりあげられた。このパネルは鈴木教授の司会の下に日耳鼻学会教育修練委員会によつて立案された卒後臨床指導指針を中心として各関連学会の代表者の出演によつて行なわれたが,このパネルには新しい企画として会場の出席者から100名のモニターが選ばれて意見の回答が求められた。私もあらかじめ募集されたモニターに応募したところ採用されて参加することができた。このモニターは研修を受ける立場,研修指導の立場,開業医の立場からの三者構成によつて採用された由であるので,私は現在卒業後34年を経過しまた厚生省指定の臨床研修指定病院に勤務していることとて研修指導者の立場として採用されたことと思う。
パネルの模様や,詳細な記録はいずれなんらかの機会に発表されることと思うのでここで述べることはさしひかえるが,全般的にみるとこの研修案は半数以上の多数によつて支持するという回答であつた。しかし意外に思つたのは(これは私だけかもしれないが)指導医側の意向としては賛成者が非常に多いのに対し,研修医側では不満足,換言すればさらに高度の修練を要望する意見が多かつたことである。これは案の作成が多く指導の立場にある委員によつて作成されたものであるということもあろうが,一般に指導医側としては多年の経験と医界の現状を見越して規準を多少甘くしたのに対し,研修医側では修練内容の理解が不足で理想に走つた要望に出たものではないかとも想像される。しかし研修医側のこの医学に対する真摯な熱意と夢をこわさないよう指導医側は自戒して今後の指導に対処しなければならないことを痛感した。
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