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I.はじめに
口蓋裂患者の言語機能の正常化をはかる上に,口蓋の形成手術に加え術後の言語治療が必要であることは,広く認められている。近年,全身麻酔の普及と正常言語の獲得という観点から,手術年齢がしだいに早くなつてきている。また,口蓋裂患者の音声に関する基礎的研究の進歩などにつれて,言語治療の内容や方法や実施時期なども種々改良されてきた。しかしながら,口蓋裂患者の言語治療については,まだ不明な点が少なくなく,すべての患者が正常言語を獲得するには,なお困難が多い現状である。
新潟大学医学部耳鼻咽喉科教室においても,早くから口蓋裂患者の言語治療の必要性を痛感し実施してきたが,その経験から軟口蓋裂患者の術後の言語成績は,唇・顎口蓋裂患者のそれに比し,良好なものが多いという臨床的印象を持つに至つた。
破裂型と言語成績との関係についての文献をみると,藤野1),吉岡2),軟口蓋裂のみのものの方が唇・顎口蓋裂の症例より術後の発音成績は良好であつたとし,P.Emanuele3),E.Monnier4)は,破裂が強度なほど構音回復の成績は悪いと述べているが,破裂の程度と言語成績とは必ずしも平行しないとする中田5),有意の差を認めないとする宮崎6),破裂の程度の少ないものが必ずしも言語は良くないとする黒住7)らの報告もあり,その結果はまちまちで研究の数も少ない。
われわれは,当教室において過去8年間に経験した約600例の口蓋裂手術例より100例を抽出し破裂型,手術年齢,言語治療の有無,発語器官の運動機能,母親の態度などと言語成績との関係について言語面と心理面の二つの面から調査を行ない,軟口蓋裂患者の術後の言語成績が優れていることを確認するとともに,その理由について考察し,二,三の知見を得たので報告する。
Six hundred cases of cleft palate operations were performed, during the recent 8 years, at the Otolaryngological Department of the Niigata University Medical School. One hundred cases were selected from among this group for statistical survey encompassing the type of lesion, the age of operation, whether or not speech training was given, the state of speech organs and the attitude of the individual's mother.
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