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Ⅰ.緒言
耳鼻咽喉科領域における悪性腫瘍の発生は喉頭および上顎に占める割合が大きい。このうち前者は咽頭の解剖学的因子から,自覚症状が早期に出現しやすいため,早期診断・早期治療ができやすく,一般にその予後は比較的良好である。これに対して上顎悪性腫瘍は早期診断の機会がきわめて少なく,また局所解剖学的にen bloc operationが困難なため,種々の治療法が試みられてきたにもかかわらず,いまだ満足すべき治療効果が得られないのが現状である。
もちろん最近の治療法の発達,特に悪性腫瘍に対する化学療法の発達には目ざましいものがある。しかしながらこのことはただちに悪性腫瘍の治癒率を端的に高めるということにはつながつていなかつた。特に上顎悪性腫瘍にあつても同様であつたと言わざるを得ない。それ故にこそ,さらによい化学療法剤の開発が待望され,かつそのよりよい使用法の開発に努力が重ねられて,遂次成績の向上が報告されつつある。以下報告する内容は,昭和32年8月より昭和42年7月までの過去10年間における上顎悪性腫瘍70例についての回顧であるが,その治療が手術と放射線療法とに限られた時期のものである。われわれは,この成績から従来の治療法の限界を知り,今後の治療成績向上への足がかりとするために統計的観察を行なつた。
A statistical survey on 70 cases of maxillary cancer that were met with during the period of 10 years, August 1957 to July 1967, is made.
The treatment of these cases were limited to the employment of surgery and irradiation which were the only means available at the time. However, recently, chemotherapy has been added to the armamentarium which gives a greater expectation in the future results of the treatment.
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