特集 耳鼻咽喉科手術の危険度
鼻
上顎洞
斎藤 寛
1
1東京医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.735-741
発行日 1969年10月20日
Published Date 1969/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207351
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上顎洞手術は耳鼻科領域の手術のうちでは歴史も古く,その解剖学的構造は周辺諸臓器と骨壁で区隔された単一な空洞で,手技方法も比較的容易であると見做され,もつともしばしばかつきわめて安易な考えのもとに施術されている。事実,他の副鼻洞手術に比して周囲諸臓器や生命に重大な障害を及ぼす直接の危険度は少ない。しかしながら手術本来の目的を十分に達し得ないとか,術後順調な経過をたどらず不快な後遺症を残したり,数年後に再発する事実は必ずしも珍しいことではない。そもそも,上顎洞手術はDesault(1798)1)Kuster(1889)に始まりGerberを経てCaldwell(1893)2)-Luc(1897)3)に至つて飛躍的な進歩がもたらされた。続いて和辻-Denker法(1905)の発表,西端4)5)の勢力的なCombinierte Sinectomieの研究により本手術はその基礎が確立された。しかしながら,この間においても,これ以後においても,根治徹底主義と保存的手術主義との間を絶えず変動し続けている6)。この変動は近来その病因解明の進むにつれ,また,抗生剤,合成ステロイドホルモン,各種の酵素剤,消炎剤などの開発と相まつて,ここ,数年来再び激しい動揺期を迎えている。現在諸家それぞれの見解の下に施行されている代表的術式をまとめると第1表に示すような多種多様な動向を示している。
保存的手術か?根治的手術か?は洞粘膜の病変が可逆性か不可逆性かにもつとも関連するのでなかなかその選択にむずかしい点もあるが一応,第2表のような事項を参照とすれば便利であろう。
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