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緒言
上顎に来る疾患にして顔面の膨隆を来すものには種々のものがある.そして鼻腔の諸症状及び急激なる発育を示す時我々は上顎癌を念頭に置く.これは顔面腫脹を来す疾患の中で頻度の大なることゝ可及的早期の診断治療を要するからである.しかし顔面の膨隆を呈する疾患にして良性のものも少くない.これらを歯系のものの副鼻腔粘膜よりのもの,上顎骨及び骨膜よりのものに大別してみると,先ず歯系腫瘍としては濾胞性歯牙嚢腫,歯根嚢腫及びアダマンチノームがある.副鼻腔粘膜より来るものとしては粘膜嚢腫及び術後性頬部嚢腫,上顎粘液腺嚢腫,ムコツエーレ及びピオツエーレ,上顎洞血瘤腫,乾酪性上顎洞炎等がある.上顎骨及び骨膜よりのものとしては慢性炎症性骨増生,上顎骨骨髄炎,上顎骨骨膜炎等である.私は最近一見上顎癌を思わしめる良性嚢腫で,それが恐らく上顎洞ムコツエーレと思われるものゝ,本疾患が文献的にも極めて稀な疾患でもあり,或は術後性頬部嚢腫にあらずやと疑つたが過去に蓄膿根治手術の経験なく,且つ他の嚢腫とは確実に鑑別しそれらを否定することは出来ないが,先ず上顎洞ムコツエーレなりと思考するのが妥当と思われる症例に遭遇し興味あると共に臨床上いさゝか学ぶ所があつたので敢て報告し諸賢の御教示を仰ぐ次第である.
INOUE reports a case of mucocele that origina-ted from the left maxillary sinus reaching the size of hen's egg and causing swelling of malar region to suggest presence of malignancy. The growth was removed uneventfully by an operation.
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