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Ⅰ.まえがき
戦後まもなく抗生物質の登場により姿を消すかと思われた慢性副鼻腔炎は現在なおわれわれの前に難治な疾患の一つとして立ちはだかつている。わが国の副鼻腔炎は著者1)の指摘のように感染が主体だが,治療対象が慢性例のため単なる抗生物質による感染の抑圧だけでは治癒が望めない。治療上もつとも問題となる病変はさきに報告2)したように粘膜の浮腫茸状腫脹,それによる自然孔の閉塞および分泌亢進である。この浮腫茸状病変は組織基質の変性による線維化治癒の阻害状態であり,基質の主成分である酸性ムコ多糖類(AMPS)の供給により,線維化を計ることができるのではないかという単純な思いつきから,コンドロイチン硫酸ナトリウムC(Ch.と略)の使用を企てた。慢性副鼻腔炎粘膜は簡単に肉眼視できないので経過の観察に不便であつたし,洞内注入,全身投与の際粘膜内Ch.濃度について十分検討の必要があつた。そこで同じような病態の,しかもきわめて高度の病変であつて,観察,局所投与,効果判定の容易な鼻茸にCh.を応用し,副鼻腔炎治療のpilot studyとしようとした。実際鼻茸にCh.を投与すると予想外の効果があり,多くの鼻茸は消失,縮少し,現在使われているいかなる薬剤より効果が著しかつたので,効果の機序に不明な点が多いが,予報として報告する。
By injecting chondroitic sulfate-C directly into nasal polyp the growth was made to disappear in 50% of cases and to become decreased in size in 72%. However, the effect of the drug appeared less evident in cases where the growth was highly fibrotic, cystic or hypertrophic.
Macroscopically, the change of the growth after injection was shown by yellowish discoloration; microscopically, by increase of connective tissues following increase of eosinophils.
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