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Ⅰ.はじめに
鼻茸には正常副鼻腔粘膜と比較して意外に多くの酸性ムコ多糖が含有されていることをすでに報告した1)2)3)。すなわち,正常上顎洞粘膜中の酸性ムコ多糖の総量は乾燥重量当り,0.15±0.03%(平均値±標準誤差,n=4)であつたのに対し,鼻茸のそれは0.32±0.04%(n=8)であり,約2倍を示し,有意に増加(P<0.02)していた3)。さらに,酸性ムコ多糖のうちでも,コンドロイチン硫酸AおよびC(ChS-A,-C)群(主としてChS-A)の増加が顕著で(正常上顎洞粘膜の乾燥重量当り約7倍),ついでヒアルロン酸(HA)が増加しており(約2倍),コンドロイチン硫酸B(ChS-B)はほぼ不変であつた3)。
一方,睾丸性ヒアルロニダーゼ(t-HAase)はHA,ChS-A,Cおよびコンドロイチン(Ch)を分解することが知られているので,この酵素を直接鼻茸内に局所注射すれば増加したそれらの酸性ムコ多糖が分解され,減少し,そのことによつて鼻茸の縮小などの変化がおこることが予想される。
日常臨床において,大きな鼻茸のために鼻呼吸障害があるにもかかわらず,高齢などのため手術拒否例や不能例にしばしば遭遇するが,これらの症例に対して簡単な局所注射で鼻茸が縮小ないしは消失すれば大きな福音となる。そこで,鼻茸内に増加した酸性ムコ多糖を分解,減少させることによつて,鼻茸の縮小ないしは変化が期待できるので,鼻茸の病態解明とも関連して,t-HAaseの鼻茸内局注療法を試みたのでその結果を報告する。
Topical injection of testicular hyaluronidase into nasal polyp in 22 patients reduced their sizes and increased of the fibrotic changes in polyps in 64% of the patients, and this enzyme was thought to digest acid mucopolysaccharides, esp. chondroitin sulfate A and hyaluronic acid, which were increased in nasal polyp. Hyaluronidase used in combination with steroids were effective in 55% of 11 patients but there was no difference in the results by the treatment with each one of them. As conclusion topical injection of hyaluronidase into nasal polyp is recommended to older patients and to whom operative procedure is contraindicated or refused.
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