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Ⅰ.緒言
酵素化学の発展とともに,いろいろの酵素剤が,わが耳鼻咽喉科領域においても,広く応用されるようになつた。とくに,慢性副鼻腔炎に対しては,最近にいたり,Chymotrypsin,Pronase-PおよびBromelainなどの経口投与による治療が報告され,さらには,武田,日根および小田らによるNeuzymの使用経験がみられる。現在,これら数多くの酵素剤のうち,実際にどれを使用したら良いか,困惑するほどである。金子のいわれるごとく,未解決の問題が,いくつか取り残されているように思われるので,今後の基礎的,臨床的問題と連関し,酵素の持つ一般的作用機序の意義に合致した症例の適応選択と使用後の遠隔成績に重点を置いて,使用すべきでなかろうかと,痛感されるゆえんである。ここに,われわれが用いたNeuzymは,とくに慢性副鼻腔炎における自覚症状の軽減および粘膿液分泌の消長を中心にして,その効果を検討したので,その結果を報告する。
本剤は,結晶性卵白塩化リゾチームよりなり,白色,無臭の甘味をもつた結晶性粉末で,分子量は,約15,000,15種,129個のアミノ酸からなるポリペプタイドの一種である。また,非常に安定で,毒性がなく,酸性液中では,100℃の温度にも耐え,その一錠中には,結晶性卵白塩化リゾチーム10mgを含有している。その作用機転は,ある種のムコ多糖類を加水分解する酵素であり,これを有する細菌の細菌膜に作用して,溶菌を起すことは,よく知られている。このNeuzym(Lysozyme)は,β-glucosaminidaseおよびpoly-saccharidase活性を有し,リン脂質,リポ蛋白などのβ(1-4)結合,または,β(1-6)結合を解離させるといわれることから,muramidaseまたは,N-acetyl muramide glycanohydrolaseとも呼ばれる。さらに,これら分解ばかりでなく,その合成代謝過程にも関与するものと考えられ,それによる粘膜組織の修復作用があるといわれている。
Neuzym, a catabolic agent for mucopoly-sachride, was administered to number of patients with chronic sinusitis daily for the period of 30 days. With this treatment in 88.6% of cases the subjective symptoms of sinusitis subsided completely and furthermore, in 74.3% of cases the disease appeared to be cured objectively. When this agent is employed in combination with antibiotics the results are still more striking.
Neuzym was used in postoperative care of patients with sinus operation with highly favorable results.
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