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Ⅰ.緒言
sudden deafnessとしてまとめられる一群の疾患にっいて近年多くの報告が行われているが,問題とされているのは,病因,臨床経過,治療等であり,次第にその輪廓が明らかになりつつある。病因については大きく分けると循環障害説,感染説,非感染性炎症説,中毒説等があり更にこれ等について詳細な観察と推論がなされている。これ等の推論は発病時又はその直前の状態,症状の起り方,体質的素因,経過,全身症状等から検討した結果であつて,剖検所見の必要性が痛感されている。1962年Schuknecht等1)はsudden deafnessの4剖検例から原因は恐らくviral labyrinthitisであろうと推定した。彼によると,Corti器官の病理学的変化は流行性耳下腺炎や麻疹による内耳障害,母体が風疹に罹患した際の胎児の内耳変化に一致しており,モルモットの内耳動脈の実験的閉塞にみられる変化とは異なっているという。従つて原因についての研究は新しい局面が展開されたのであるが,sudden deafnessの症例を臨床的に観察していると,きわめて多くの要素が混在しており,1例1例が固有な特長を有し,非常に複雑な症候群であるという印象を免れない。剖検例においても発病以来長期間経つている場合に発病時の状態,特に可逆的な変化にっいて正しい知見を得ることが出来るかどうか疑問である。むしろ精密な聴覚,前庭機能検査によつて微細な変化を忠実に記録出来るのではないかと考えられる。
すでに報告したように,我々2)はsudden deafnessが発病後ほぼ1ヵ月で固定した聴力像を示すことから,発病後1ヵ月以後に測定したaudiogramを用いて,高音感受部位が選択的に障害されている型と広く低音部から高音部に亘り種々の程度に障害されている型(全聾も含む)に大別した。これ等の一部について聴覚,前庭機能の諸検査の結果を考察し,病変の特長を知り,内耳における病変の拡がりを模型団として表わすことを試みた。
Cases of sudden deafness were examined by pure tone audiometry, Bekesy's audiometry, standard speech audiometry, speech audiometry filtered by 1200 cps low pass filter, caloric response test and finally, by observation of positional nystagmus. The difference of vestibular function was described between two types of sudden deafness; the high tone loss (1st type) and the hearing loss in whole range (2nd type). Directional changing positional nystagmus was found in 4 out of 8 cases of 1st type, while 26 cases out of 37 of the 2nd type showed directional nystagmus toward one side. This difference was supposd to be due to quantitative factor of a lesion in the vestibule.
A schematic picture of labyrinth in sudden deafness was also demonstrated comparing these two types.
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