一頁講座 神経心理学的症候
語聾 word deafness
中野 明子
1
1秋田県立リハビリテーション・精神医療センター機能訓練科
キーワード:
純粋語聾
,
側頭葉損傷
,
感覚性失音楽
Keyword:
純粋語聾
,
側頭葉損傷
,
感覚性失音楽
pp.1073-1074
発行日 2000年11月10日
Published Date 2000/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109359
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- 文献概要
話し手の発話を聴いて,不思議そうな,あるいは戸惑った表情をし,彼らの多くは人の声が“雑音”,“外国語”,“木々のざわめき”のようだと訴える(Klein & Harper,1956;Zeigler,1952;Albert & Bear,1974;Luria,1960).彼らは聴力に障害がないが,相手の質問を理解できず,復唱や書き取りもできない.大脳損傷後,聴覚的に呈示された言語情報が理解できない症状を語聾word deafnessと言い,Wernicke失語の一症状としてしばしば認められる.しかし,まれに自発話,音読,読解,書字は良好に保たれ,筆談など視覚的情報による意志疎通は可能であるなど内言語が保存され,また,環境音など非言語音の認知障害を伴わずに純粋型で発現する場合がある.これを“純粋”語聾pure word deafnessと呼ぶ.ただし,実際の報告では,声量の増大やプロソディの障害を示す例を認めたり,音韻性錯語,呼称障害など多少の言語的誤りを認める例が多い.また,`熟知していた曲のメロディやリズムの認知が悪いなど,感覚性失音楽を伴うことも多い.
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