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I.緒言
メニエル氏病は,その症状として発作性に眩暈を来し,同時に難聴,耳鳴を伴うので,その経過の時期によつて,他覚的検査の結果が変つてくることは容易に考えられる。また症状が可逆的であるということは,疾患の原因を掴み難い一つの理由である。1938年にHallpike and Cairnsがメニエル氏病患者の剖検例から,組織学的に蝸牛の内淋巴水腫を認め,この疾患の原因を内淋巴圧亢進に帰した。その後同様の所見がAltmann and Fowler,Lindsay,Rollin,Wittmaack等によつて報告された。しかしこれらの病理学的所見は経過中の一断面であつて,これに伴う臨床症状と一致したとき,その原因であることが確かとなる。メニエル氏病の如く症状の変化する疾患は,その経過を追つて観察することが必要である。
著者はメニエル氏病の原因とされている内淋巴水腫を実験的に家兎蝸牛に生ぜしめ,この動物を用いて日常臨床で行われている迷路反応を検査し,メニエル氏病の症例と,経過を追つて比較観察した。従来の報告では,メニエル氏病の多数の症例について経過を追つて検査観察された例は少なく,動物による実験的メニエル氏病では,経過の観察は行われていない。このように経過を観察することが,メニエル氏病の原因としての内淋巴水腫を理解する上に必要であると考えたので,臨床的観察と共に実験を行い,両者の関連性を追求した。
The cause of Ménière's disease is investigated from the standpoint that it might be the edema occurring in the endolymph. Edema of the endolymph was established in rabbits ; objective tests in these animals were compared with clinical cases of Ménière's disease. It appeared reasonable to assume that increased endolymphatic pressure to be definitely one of the cause ; signs produced in experimental animals were much similar to human cases of the disease. Thickening of the Leisner's membrane did not always produce nystagmus.
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