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職業性難聴に対するパントテン酸カルシウムの効果
村上 忠美
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1日立造船株式会社向島病院
pp.853-855
発行日 1960年10月20日
Published Date 1960/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202543
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I.緒言
職業性難聴の本態については今尚明確にはされていないが,一般にはこの難聴が慢性音響性外傷が原因であることから,コルチ氏器の末梢感覚器を形成する有毛細胞の障害に始まる上行性中枢神経障害と考えられている。
最近結核の化学療法の急速な発展と共にストマイによる難聴が大きく取りあげられ,その研究業績は枚挙にいとまもない。志田はこのストマイ難聴の臨床像が職業性難聴に酷似する点から,内耳末梢なかんずく有毛細胞障害に基因するものと推察し,更に蝸牛障害の様相を電気生理学的に追求,本難聴も有毛細胞に始まることを立証したのであるが,このストマイ難聴の予防乃至治療にはコンドロイチン硫酸,チオクト酸,パントテン酸等一連の細胞代謝を賦活する薬剤が有効であることは,氏を始め多数学究の報告するところである。ストマイ難聴に有効なものであれば,その臨床像の酷似する職業性難聴にも効くであろうことは容易に想像されるが,この方面の研究は河田,菅野等数氏の報告にとどまり,殊に本格的予防に用いたと云う報告は皆無と云つてよい。
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