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ストレプトマイシン難聴に対するチオクタンの使用経験
大沢 林之助
1
,
中村 正弥
1
,
鈴木 敬
1
,
須賀 秋男
1
1東京逓信病院耳鼻咽喉科
pp.567-576
発行日 1960年7月20日
Published Date 1960/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202486
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I.まえがき
1943年Waksmanによりストレプトマイシン(SM)が発見されたが,1945年には早くもHinshaw及びFeldmanによつて第八脳神経に対するSMの撰択的副作用が報告せられるに至つた。当時は大多数に前庭機能障害が認められ,自覚的難聴は極く一部に過ぎなかつた。然るに1946年ジヒドロストレプトマイシン(DHSM)が登場するに及んで前庭障害は著明に減少したけれども,難聴は多発するに至り,これと共にSM難聴に対する予防及び治療の問題が耳鼻咽喉科医の重要な研究の1つとなつた。近年SMの使用方法は一部を除いて連日筋注法から週2回2g筋注法が採用せられるようになつたので,難聴の発生率は可成りの減少を示しているがなお8〜10%或は20〜30%と報告せられている現状である。
SMの障害作用は現在は内耳有毛細胞に始まるretrograde ascending degenerationを起すものと理解されているが,内耳に於ける変化は,先ず外有毛細胞の核に発現し,障害作用が或る限界を超えれば核の変化は非可逆的となり,機能の回復も望み得なくなる事が知られている。
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