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I.緒言
耳鳴は耳鼻科領域においてはありふれた症状でありながら,各種の療法によつても難治のものが多いのも周知の事である。耳鳴には他覚的と自覚的とあり,他覚的耳鳴は聴器及びその周囲の血管,筋肉等の音を耳鳴として感ずるので,その対策も比較的容易であるのに比し,自覚的耳鳴はその原因に血管説,脳圧説,聴神経興奮説,中耳腔内病変説,精神的影響説等種々見られ,それに伴い治療も一定のものを見いだし得ない現状である。殊に最近内耳機能と自律神経との関係の微妙な動向が着目され,自律神経系機能失調に基づく内耳障碍は単に従来のMénière氏病のみならず,前庭症状を伴わない蝸牛障害を主体とするものも認められている。即ち蝸牛の動脈分布は人体においては前庭蝸牛動脈及び固有蝸牛動脈に支配され,しかも終末動脈であり,これらの血管の異状特に収縮状態及び局所の貧血等は耳鳴の現象と著しく親近性をおびている。実際今まで記述された耳鳴治験症例を検討しても血管作用剤が圧倒的に多いようである。そこでこれらを考慮に入れ比較的有効と思われる薬剤を,合理的に配合したStopmin鉛がゾンネンボード製薬会社から試供品として提供されたので,耳鳴患者28例48耳に使用し一応の成果を得たのでここに報告すると共に,合せてそれぞれの患者の自律神経緊張状態をAdrenalin,Pilocarpin試験により測定し,自律神経と耳鳴及びStopmin錠の効果とを比較し,耳鳴の成因の考察及び治療の一助にと考え報告する。
In 28 cases 48 ears of tinnitus aurium stopmin was tried as the therapeutic agent. It was effective in 13% and ameliorated the condition in 29%, the total of 42%. By use of adrenalin and pilocarpin tests among the patients complaining of tinnitus aurium it was found that the majority of them belong to a group whose sympathetic nervous system is highly irritable. And to such a group the use of stopmin appeared to he the most effective.
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