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胃潰瘍を伴える壊疽性鼻炎の1症例
井出 富雄
1
,
五十嵐 篤男
1
,
大野 文朗
1
,
宮部 勲
1
,
大蔵 丈太郎
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.379-383
発行日 1960年5月20日
Published Date 1960/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202445
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I.緒言
進行性壊疽性鼻炎は特発性鼻壊疽,進行性壊疽性潰瘍,潰瘍性鼻炎,進行性顔面壊疽,馬鼻疽類似症或いは組織像より悪性肉芽腫とも呼ばれ,これら一連の進行性壊疽疾患については,S. Kaufmann(1917)の報告以来,Kraus(1929),Voss(1934),Joisten(1936),Quix(1936),Schütz(1938),Knapp(1938),Bergquist(1949),Alexander(1954),Paterson(1956)等の多数の報告がみられ,わが国では国分(1615)の報告以来,諸氏の発表が相次いで記載されている。しかしその症状の多様なる事,又いかなる局所および全身的療法を試みるも効なく全身衰弱,出血等のために遂に死の転帰をとることの多い恐しい疾患であるが,各方面よりの検索にも拘らずその本態に関してはなお解明されるに至らず,炎症説,腫瘍説等,種々論議され,その適確な治療も確立されていないのが現状である。我々は本症について約5ヵ月にわたり各種の治療を施したが不幸にも鬼籍に入り,剖検の結果,胃壁に出血を認め,その組織構造が顔面の潰瘍と一致するのを認めた。このような症例は川嶋の報告例にも類似し,興味ある1例として報告する。
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