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症例 45歳 男性
現病歴:36歳時に交通外傷で他院入院時に糖尿病と診断され,インスリン加療が開始された.同年,両側増殖性網膜症,硝子体出血を認めたため硝子体手術が行われた.38歳時,右足低温熱傷①受傷,近医皮膚科で加療された.当科紹介となる3カ月前より右足の腫脹を自覚していたが,疼痛がないために放置していた②.約2週間前より徐々に足底に黒色変化が生じ始めた.約1週間前に右第4趾に発赤を生じたため,近医皮膚科受診.抗菌薬およびNSAIDsが処方されたが改善なく,局所所見の増悪を認めたため,当院内科へ緊急紹介となった後,当科紹介となった.インスリン;ノボリン® 30R朝8単位,夕8単位.
初診時現症:右第4趾は黒色壊死.基部より排膿を認めた.足関節までの発赤・腫脹および腓腹部までの腫脹あり③.足底に水疱形成認め,内容は暗赤色調であった(図1).足部には握雪感を認める④.体温39℃.脈拍114/分⑤,血圧140/60 mmHg.診察室外でも認識できる悪臭⑥あり.足背動脈および後脛骨動脈は触知できた.
検査所見:WBC 32,100/μL,RBC 405万/μL,Plt 34万/μL,CRP 25.29mg/dL,グルコース358mg/dL,HbA1c 9.3%.画像検査;足部単純X線写真でガス像が疑われたため,CT検査を行ったところ,足背および足底にガス像を認めた(図2).
対応と経過:ガス壊疽と判断し,緊急での切開排膿およびデブリードマンが必要と判断した.感染巣の開放と壊死組織の可及的な除去が基本であるが,第4趾の切断については患者が断固拒否されたため,同日の切断は行わず,骨とわずかに皮膚を残した.切開は第4趾基部より中枢に向かって足底側および足背側にそれぞれ行った.足底腱膜は壊死して融解しており,深趾屈筋まで感染の波及を認めた⑦(図3).第3趾側も横靭帯に沿って感染の拡大を認めた.術中にスワブ法,および感染性組織の一部を細菌培養に提出した〔後日,検鏡ではグラム陽性桿菌およびグラム陽性球菌が観察され,培養の結果,Proteus mirabilis(通性嫌気性菌)およびStaphylococcus aureusが同定された〕.
内部を十分に生理食塩水で洗浄を行った後,ヨウ素含有カデキソマー軟膏を塗布,シーネ固定を行い,歩行を制限した.
当科受診より10日目,足部の感染がコントロールされたため,本人・家人の希望により自宅近くへ転院となった.
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