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Ⅰ.緒言
耳鼻科医を訪れる患者の中で眩暈を訴える者は少くない。而して身体平衡の調整に与る器官としては,迷路感覚及び深部知覚が先ず上げられるのであるが,高等動物殊に人間に於ては,日常生活に於て視覚による平衡維持も亦大きな役割を演じているものと考えられる。迷路機能としての平衡反射が眼筋に及んでいることも,例えば体位の急速な変換が行われた場合に,眼球の方向即ち視線が,必要な方向へ転ずるのを反射的に促しているものと考えるのが妥当であると思われる。即ち,眼筋は少くとも視性並に迷路性の2つの神経路の支配をうけていると考えられる。
従来迷路機能の検討に際して,視覚の影響を除外して,純粋に迷路の影響のみを観察しようとする努力がなされている。即ち,或は,Frenzel氏眼鏡等の適用,或は閉眼時の眼球運動の記録等の意義が強調されている。然し患者の訴える眩暈は日常生活時に於けるものであり,当然視覚の調整下のものである以上,その眩暈の綜合的観察には,視刺激が眩暈に対してどのように影響しているかと言う問題も亦,臨床的意義をもつものと考える。更に近年,迷路機能検査による脳疾患の診断の発達に伴い,視性眼振の方向優位性の問題が取り上げられ,部位診断に1つの役割を占めるものと考えられている。以上のような考察の下に,視覚による体位調整特に視性眼振に関して若干の実験的研究を行い,その臨床的意義に関して若干の知見を得たので之を報告する。
Takakura and Yohsida investigate the cli-nical significance of ocular nystagmus by us-ing individuals in a normal health and those affected with complaints of marked vertigo. as clinical material;they come to following tenative conclusions:
(1) Ocular nystagmus is a phenomenon pro- duced by reflex response to visual stimu- lation and it is involuntary in control.
(2) No difference in the left and right sides is noted in persons of normal health.
(3) In a normal health there is a relation between the rate of movement of the vi- sual field and the number of excursions of the nystagmus that may be shown re- gularly, graphically by a straight line.
(4) In a certain diseased conditions these rela- tions as observed in (2) and (3) may be found to be changed: such changes may be classified into 6 different groups.
(5) Vertigo causes abnormal reflex moveme- nts of the eyeball.
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