特集 副鼻腔炎の病理と治療
副鼻腔炎とアレルギー
白川 吾一郎
1
1徳大
pp.907-917
発行日 1956年12月25日
Published Date 1956/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201688
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Ⅰ.緒言
慢性副鼻腔炎は極めて多い疾患である。それに関する研究報告は枚挙にいとまのない程沢山ある。然し治療面に関しては未だ完全とは言い得ない。如何に練達の手術者が手術を行つても治癒し得ない症例は少くない又其の成因に関しても未だ判然としない点が多々ある。斯くの如き理由に対しては従来より素因,体質等の言葉が漠然と使用されている。近時アレルギー学が勃興し,あらゆる部門にこれが取り入れられるようになつてから,慢性副鼻腔炎の成因をアレルギーと結び付けようとする研究が盛んになつた。Hansel, Eliss Proetz等は其の代表的な者である。我が国に於ては近時稍々これに関する研究が盛んになりつゝあるが,他の専門部門に比較して極めて低調である。
慢性副鼻腔炎の一部がアレルギー機序によつて発現することは,欧米に於ては既定の事実のようになつている。然るに我が国に於ては,アレルギー発現の状態が欧米のそれと多少異なるためか,アレルギー性副鼻腔炎の発生に関しては今尚多少の疑義を持つものすらある。私は次に我々の教室で行つた種々の検査事項に基いて副鼻腔炎とアレルギーとの関係を述べようと思う。
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