特集 副鼻腔炎の病理と治療
慢性副鼻腔炎の骨病理について
仁保 三四次
1
1鏡友会
pp.875-884
発行日 1956年12月25日
Published Date 1956/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201686
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Ⅰ.緒言
副鼻腔周囲をとりかこむ骨組織は,側頭骨含気蜂窠と同様に,骨膜の上に直ちに薄い粘膜が被覆して居り,鼻腔を経て外界と交通している点,身体他部の骨組織とは,解剖学的に興を異にしている為,上気道の炎症によつてしばしば影響を受けるであらう事は,容易に想像される所である。然るに,側頭骨においては,高度の炎症に際して,骨炎の存在が早くから注目されていたが,慢性副鼻腔炎の病理組織学的研究は枚挙にいとまないにもかかわらず,その骨病理については,比較的等閑視されていた様であり,又,その臨床的意義について考察を進めたものは,はなはだ少なく,拡張性,或は潰破性副鼻腔炎や,脳膜炎,眼窠蜂窠織炎等の重篤な合併症に際しての骨破壊が注目されていたにすぎない。
本症の骨病理についての歴史をふりかえつてみると,Hajek,Eggston,Domochowski,Uffenorde,Berberich,Manasse,Nühsmann等が,上述の種々な合併症に際しての骨の病理組織学的所見について報告して居り,本邦に於いても,角岡氏が屍体において骨病変の存在と慢性副鼻腔炎との関係について注目し,天野氏は手術的に採取した上顎洞顏面壁の骨組織の病理組織学的研究をなし,その臨床所見との比較を詳しく発表されて居り,片岡氏は実験的研究から,初期に於ては骨破壊を,晩期に於いては骨新生増殖を見ると云つて居る。
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