特集 副鼻腔炎の病理と治療
小児慢性副鼻腔炎
鈴木 篤郎
1
1信州大学
pp.919-931
発行日 1956年12月25日
Published Date 1956/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201689
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与えられた題目は小児副鼻腔炎と云う事であつたが,記述を慢性副鼻腔炎に限局し,急性炎症についてはここでは触れない。従つて以下本文中に「本疾患」とあるのは慢性副鼻腔炎を指しているものと思つていただきたい。
さて,1910年代迄は,小児副鼻腔炎の研究と云えば殆どすべて,急性骨髄炎を起し重篤な経過をとる所の所謂乳幼児急性副鼻腔炎に関するものばかりであつて,それ以外の一般副鼻腔炎についての記載は,我国に於いては勿論,海外文献を繙いても殆どこれを見出し得ない。唯病理学的方面では屍体の検索により他疾患で死亡した小児にも副鼻腔炎のある事が古くから認められて居り,Harke(1895)は小児剖検394例中62例(15.7%)に副鼻腔の炎症の存在を認め,Wertheim(1900)は10歳以下の小児屍体72例中3例に副鼻腔蓄膿ありとし,0ppikofer(1907)は1〜10歳の小児屍体8例中5例(62.5%)の副鼻腔に粘膜の炎症性変化の存在を指摘して,小児にも副鼻腔炎の稀でない事を強調している。
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