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1.ストレプトマイシン
1944年Waksmanによつて発見せられたストレプトマイシン(以下SMと記す)は結核性疾患に対する有力な化学療法剤として広く卓効が認められているが,一方本藥剤の欠点として数々の副作用が挙げられている。初期における注射のための一過性発熱やアレルギー様反応は藥剤の精製によつて殆んどみられなくなつたが,前庭麻痺を特徴とする眩暈のみは投与法の改善によつても完全に除去することはできず,このような前庭神経への親和性こそSMに特有なそして本質的な毒作用とみなされるに至つた。
その後SMの還元型というべきダイハイドロストレプトマイシン(以下DHSM)が作られてからはこれらの欠点は殆んど一掃されたが,困つたことにDHSMは前庭神経をあまり侵さぬ代りに蝸牛神経を強く障害することが判つてきた。すなわちDHSM療法を受けた患者はしばしば耳鳴や難聴に悩まされ,結核性脳膜炎などの場合ににその治癒の代償として高度難聴または聾というような不具の危険にさらされねばならなくなつた。これがため最近難聴防止の意味で再び旧のSMを使用すべきだとの意見1)18)が提出されている。また同じ目的でSMとDHSMを等量混合した複合ストレプトマイシンが出現したが,本剤の副作用も単に両藥剤の副作用の和に過ぎないことが判明している9)14)。
Muta presents an outline on the symptom complex characteristic of streptomycin toxicosis of the inner ear. The author alludes this condition to radiation burns in that they have a similarity in being progressive in character after initial stimulation has ceased. In treatment of this condition the use of Henebert's BAL is recommended and the discussion on the role of protein and the action of SH is fully entered upon.
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