--------------------
結核とストレプトマイシン
加藤 勝治
1
1東京醫科大學病院
pp.1-3
発行日 1949年7月15日
Published Date 1949/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200491
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ストレプトマイシンは1944年Schatz,Bugie and Waksmanがグラム陽性竝びに陰性の細菌に對する抗生物質として發表したのであるが,間もなくFeldman and Hinshaw(1944)は,この藥劑を結核症に應用したので,世間一般の人々は,結核の療法にこれが特效藥であるかのような印象を與えるに至つたのである。その後多數の臨床試驗が,この抗生物質に對し行われたのであるが,主として結核性腦膜炎とか,粟粒結核とかいうような,多少死をもつて決定點と見ることが容易な症例のみが選ばれた。しかしながら,他の結核症殊に慢性の經過をとるような場合には,この特效藥の價値な判斷することが甚だ困難であり,結論的の斷言は許されないのである。
この事状に鑑み,アメリカではハーヴアード大學の内科教授Keefer博士が,調査委員長となり,復員軍人行政團,陸海軍醫務部,合衆國衞生研究所,ツルドウ會治療委員會等の治驗例を調査したところ,約2,000名の結核患者に對し,ストレプトマイシンの效果が判定されるよう報告が得られたのである。最近日本占領軍總指令部は,これらの成續を綜説して,次のような覺書を,日本醫師會,および他の醫療機關に對し,發送した。即ち,(1)粟粒結核症患者には,ストレプトマイシンを使用することは望ましい。この種の患者では,使用中止後,約半數は生存し,また大部分の患者には,臨床的および,レ線的所見が消失する。
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.