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慢性潜在性副鼻腔炎に就いて
北村 武
1
1千葉大学医学部耳鼻咽喉科教室
pp.53-56
発行日 1955年2月20日
Published Date 1955/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201269
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Hajek,Uffenordeの著書にょると(篩骨蜂窠炎ではあるが)顏面に変化が現れた時だけを顕症型と呼び,然らざる場合を潜在型としている。西端教授の教科書には鼻内所見によつて診断不明の場合を潜在型としている。この外閉鎖型とも呼ばれ,副鼻腔に相当の変化がありながら,鼻内に明かな所見を欠く慢性副鼻腔炎がある。そう云つた所にX線診断の必要性があるわけであるが,X線所見と副鼻腔の病的変化の間にも猶一致をみない事がある。この解決の一手段として,造影剤を副鼻腔に注入し,撮影する事が行われる様になつた。そこで潜在性副鼻腔炎の範囲が一層狭くなつたのである。
さて我々は昨年末までに600例を越える症例に20%Moljodol(以下Mと略す)を主として上顎洞に注入撮影を行つている。この実施方法は上顎洞を下鼻道からSchmidtの探膿針で穿刺し,生理的食塩水で洗滌し,洞内容を洗い出してから6-10ccのMを注入,直に撮影する。X線は水平に放射し,頭位は直立としBuckyのBlendeを使用し,8ツ切のFilmに前後及左右の2方向から撮影する。洞が正常なら粘膜は薄く,Mは48-96時間内に排出される。病的であれば,粘膜の変化に応じて,Mの陰影と洞骨壁の間に透明層を認め,且排出が遅れる。M注入の結果粘膜の薄いのは解つたが,猶副鼻腔に疑問の持れる症例では連続撮影を行つてMの排出状況を観察した。正常の時間内に排出される事が多かつたが,一部では排出が遅れた。このうち25(33側)では単に排出が96時間以上を要し,粘膜が僅かに腫脹したにすぎなかつたが,残りの19例では粘膜が非常に腫脹し,内腔に向つて膨隆して来た。
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