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緒言
各種高速度交通機関が著しく発達し,而も夫等が言はばやゝ乱雑に横行濶歩する現代に於て,交通事故防止からも各人に正確なる方向知覚が要求せられる。之の方向知覚に関しては古くより幾多の業蹟が発表せられ,又多くの学説も樹てられている。併し之等に於ても学説と実験との間には多少の矛盾が存在し,又方向知覚に関して,外耳,中耳,内耳,及び其の他の因子が如何様に関与するかに就いては未だにはつきりした結論は出て居らず,今後幾多の基礎的な実験がなされなければならないように考える。
私は最近中村臨床に於て耳介癌の為に右耳介を全く切除した1例を経験した,そして手術創の治癒後,之の患者の耳介喪失が方向知覚に如何なる影響を及ぼしているかを測定して見た。測定例数が少ない為にはつきりした決論が出せないのは勿論であるが,耳介癌に関する症例報告と共に,その方向知覚に関する測定結果を報告し,今後この方面の研究の一資料となれば幸と考える次第である。
TAKAKI states that localization of sound, the comprehension of the direction whence it may arise, is a resultant sensation derived from sum total functions of various organs, the head, pinna, external ear canal, the middle ear, the inner ear and hearing center, which are incorporated into one.
A case in whom the pinna is lost is repo-rted with discussions. A review of literature on this subject is made.
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