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異物のつき落しの話/重聽の由来
pp.153
発行日 1954年4月20日
Published Date 1954/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201106
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食道異物に際して,所謂「突き落し」法を試みる事は,我が国に於ても直逹鏡検査の普及しなかつた時代に広く行われた事であるが,現代に於ても往々之を行う人のあることは寒心に堪えない。食道に狭窄その他の疾患があり,或は胃病等のために嘔吐が続く時には,無智蒙昧の階級にあつては,食道を掃除したならば,よく食物が通過するようになるだるうとの考えが,浮ぶことは否定出来ない。
南朝鮮の交通不便な島嶼山間に居住する貧農漁民の間には,事実この観念が存在して,かかる際,柳の枝の先端に帽子状の綿又は布を附した鯨骨「アヂー」類似のものを用いて,住民中の多少熟練した者が之を行うという。そこで此のために不幸が起る事は当然である。
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