特集 扁桃摘出の病理と手術
耳鼻咽喉科領域特に小兒の扁摘に於ける"所謂胸線死"に就て
平野 一彌
1
1日本醫科大學耳鼻咽喉科學教室
pp.725-730
発行日 1953年11月30日
Published Date 1953/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201008
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小兒は勿論成人に於ても輕度の運動,麻醉實施中又は其の直後,或はワクチン,血清注射直後,驅虫劑の服用,輕症なる傳染病の經過中特に認むべき原因なくして,突然死を來し,又シヨツク症状を呈する事あり,此れ即,所謂胸腺死と言われるもので,時には死因に對する疑義より法醫學的對照となる事すらある。此の樣な事柄は古くより認められて居り,Kopp及Rokitanskyの記載に次いで,1889年Paltauf氏は小兒225例,成人5例の突然死の剖検例に於て,胸腺肥大,淋巴系統即淋巴濾胞,扁桃,脾臓の腫脹,骨端軟骨の佝僂病樣變化,大動脈の狹小を認め,之を異常體質となし,抵抗力の減弱並に異常反應を以て突然死を來すことがあると述べ,其の形態的特徴より胸腺淋巴體質と稱したのが最初である。之から原因不明の突然死の場合,剖検により死因と認められる著明な變化なく,胸腺,淋巴腺の肥大のある時は,胸腺淋巴體質だと言つて死因を體質異常に負わす傾向が強くなれども,此の樣な突然死があると言う事は私達臨床にたづさわるものにとつて,日常注意せねばならぬ事と考えられ,又最近當教室にて剖検上胸腺死と診斷された症例を經驗したので,胸腺死について考察を進め,此處に併せ症例を報告し御參考に供したいと思う。
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