特集 扁桃摘出の病理と手術
扁桃病巣感染の臨床的觀察
猪 初男
1
,
甲能 幸一
1
1國立東京第二病院
pp.717-724
発行日 1953年11月30日
Published Date 1953/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201007
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Fokale Infektionなる概念が一般に認められたのはかなり古いことで,これに關する先人の研究も多いが,口蓋扁桃がそのFokusとして最近再び重要視されて來たことは周知の通りである。
Gutzeitは「Fokale Infektionとは身體の何處かに限局した慢性の感染性炎症状(原病巣)があつて,それ自身は殆んど無症状であるか又は時に症状を呈するといつた程度のものにすぎないが,しかしそれが原因となつて,その原病巣から離れた諸臓器組織に反應性の器質的又は機能的障害を起してくる病像をいう」と定義しているが,この考えは一般に認められた考えで,我々臨床醫家にも理解しやすい。原病巣から如何なる機序によつて病巣感染が成立するかについては,いろいろの説があるが要約すれば細菌説とアレルギー説の2つに分つことができる。前者は原病状に於ける細菌又は菌毒素がリンパ行又は血行を介して遠隔臓器に達し,ここに二次疾患を起すという考えで(Hunter,Rosenow,Curschmann),後者は原病巣から時にその内容物が個體の體液中に混入し,これが抗元となつて抗體を産生し抗元抗體反應の結果として二次疾患が起るという説で(Berger,Horster,馬杉,岡林),今日一般の支持を得ている説であろう。最近Scheiffarth u. Bulittaがdysproteinämische ReaktionをもつてFokaleInfektionを論じているのはまことに興味深い。
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