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耳出血と鼠
小林
pp.351
発行日 1953年7月20日
Published Date 1953/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200934
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耳出血と鼠とは甚だ縁遠いもののようであるが,人間と鼠とは,お互いに仲が惡いながらに,別れられない生きものである。殊に,吾々日本人は,子供の時から常に鼠の音のする天井を頂いて寢ているので,天井裏は鼠の天下である事も承認している。この鼠達の仲間爭いとか御馳走の中毒とか,其の他色々の原因で斃れた鼠に蛆が生じたために,天井から蛆を降らせることがある。偶にば,丁度眞下で寢ている人間の耳の孔へ蛆が落ち込むこともあり得る。此の偶發事が即ち耳出血と鼠の關係ある所以である。
私には實際に,耳出血と耳痛とを主訴として來た患者を診察して,それが天井裏の斃鼠の蛆によつて發病したものである事を知つた2,3例がある。
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