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鼻咽腔の纎維腫は纎維性鼻咽腔ポリープfibroide Nasenrachenpolyp,又は頭蓋底纎維腫Basalfibroidと呼ばれる頭蓋底附近の骨縫合又は後骨頸椎関節内の纎維性軟骨より発生する腫瘍で楔状洞底から咽頭扁桃腺の存在する上咽頭後壁にかけてその基底を有つている場合が多い.発生部位から分けると前者はBasilare Typusに属し,更に楔状洞より篩骨に亘つて発生するもの(Sphenoethmoidaler Typus),欧氏管口附近から発生するもの(Tubalar Typus)等が挙げられている.この腫瘍は15〜25才の頭蓋発育の最も旺盛な時期に多く見られること,それ以後に於ては腫瘍組織血管に硝子樣変性を起して発育が停止するか,或いは萎縮消失することのあること,從つて頭蓋の骨化現象と密接なる関係のあること,特に男性に多い(87% Kobylynsky)こと等も既に一般に知られていることである.その発育が除々に進む爲か或いは又斯うした患者は非常に鈍感になるものか臨床を訪う場合には既に鼻咽腔から鼻腔全く充してしまう程の巨大なものになつている場合が多い.
組織学的には三角形,紡錘形又は円形等の核をもち膠樣維化した纎維細胞より成り,腱又は筋膜の組織に酷似した所見を呈するが,血管新生の著明なことが特徴である.彈性硬の表面円滑な腫瘍で,重層の扁平上皮細胞を以て被われている.発育進渉の時期を異にした組織が同化円的な層をなして認められることがある.成長は常に膨張性で抵抗の弱い部分を辿つて行くので,前方に進んだものは鼻腔の形に相應して狹く高い扁平な形を呈し一見ポリープ樣に見える.鼻咽腔を充す部分は,鼻咽腔の形に一致し,軟口蓋縁からその底部が丸くはみ出て見られる.幼若者に見られる成長の早いもの或は肉腫化したものでは楔状洞及び篩骨蜂窠の天蓋を破壞して頭蓋内に進入し脳膜炎を起して死の轉機をとる.組織学的には良性腫瘍であり乍ら臨床的には惡性腫瘍と認められ,その増大が個人の全身的状態と密接な関係にある点が又この腫瘍の特殊の性格でもある.非常に出血し易く單なる鼻腔又は鼻咽腔の炎症性ポリープと見做して寒蹄係にて一部切断を試み猛烈な出血に遭遇した例は屡々聞くことである.
Surgical removal of naso-pharyngeal fibroma is generally regarded as one of the most onerous operations in the field of otolaryngology. To overcome some of these burdens Goto proposes a method by which the growth is exposed throhgh a combined transmaxillary and oral route by separating the soft palate. In this way the base of the growth is made accessible which is then constricted off by means of a steel wire. The mass is cut off above the constriction with a pair of scissors. Remaining base eventually slough off also, along with the steel tie in about 2 weeks of time. Fibroma in this area arises from the bony structures at the base of the skull with firm attachments. By reason of individual and constitutional susceptitibility for its presence recurrences after surgical removal are quite common and the subject of profuse hemorrhages. The present method the author states eliminates troublesome hemorrhages both, during and after operation.
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