論説
所謂歐氏管中耳加答兒の中耳腔陰壓に就て(附 創案せる中耳腔壓力計)
高原 滋夫
1
1岡山醫科大學
pp.133-151
発行日 1948年8月1日
Published Date 1948/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200080
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所謂歐氏管中耳加答兒は日常屡々我々の遭遇する疾患であつて、之に關しては古くより種々研究論議されているに拘らず、今日に至るも尚その本態の全てに鮮明であるとは云ひ難い洵に興味深き疾患である。
扨て本症の成立に當り、恒に大なり小なり歐氏管に狹窄乃至その機能の不全が前提として存在する事は確實な所であつて、此の障碍の爲中耳腔(之と連絡せる側頭骨全含氣蜂窠をも含む――以下單に中耳腔と記す)に換氣障碍を來すと共に、他方中耳腔の空氣はPolitzer,Zaufal,Bezoldの始唱せる如く、周圍組織より漸次吸收されて、茲に中耳腔内に陰壓が生ずると云ふ事は今日概ね諸家の認むる所である。然し此の陰壓が、本症の諸症状と如何なる關係にあるか、例へば本症に屡々見られる中耳腔内瀦溜液の成立に對し如何なる關係があるか、惹いてはBezold一派の唱へる補空水腫なるものが果して實在するや否や、又本症に於ける鼓膜所見の一特徴たる鼓膜内陷並同時に屡々見られる鼓膜萎縮が果して陰壓によるものなりや否や、更に本症に於ける聽力障碍と陰壓との關係は如何等に就ては諸家の意見必ずしも一致していないのみならず、本症に於ける中耳腔陰壓が夫等諸症状を惹起するに足る程大なるものなりや否やに關し疑を抱ける學者今尚尠くない現状である。
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