論説
耳迷路外科の經驗
立木 豐
1
1東北大學
pp.151-157
発行日 1948年8月1日
Published Date 1948/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200081
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1.緒言
文献に就いて見ても、迷路炎の手術に關する問題の重點は、飽くまで合併性の迷路炎の場合にある樣である。迷路炎を起した場合何時吾々はこれを合併性の迷路炎として迷路手術を行う可きか、而も其際常によき成績を以て手術し得る爲には如何なる時機を撰ぶ可きか、更に一歩を進めて、手術すれば助かる、手術せざれば死ぬ、この一線は何處に求めらる可きであるか。或はこれ等は最早理論に非らずして、多くの經驗を俟つて始めて會得せらる可き性質の問題であらう。然らばかかる經驗こそ吾々臨床醫家が一日も求めてやまぬ所のものであらねばならぬ。
著者は最近六ヶ年に於て稍々屡々迷路全摘出術を問題とせざるを得ない症例に遭遇した。而もその際迷路を摘出して疾患の治療に成功した場合もあるし、不幸遂に死の轉歸を防止し得なかつた場合もある。今此處にこれ等成敗の跡を顧み、迷路手術の適應、時期、豫後等に關する著者の經驗を述べて見度い。若しそれ大方の御批判と御叱正とを得ることが出來れば著者の最も幸とする處である。
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