カラーグラフ 目でみる耳鼻咽喉科
滲出性中耳炎—中耳腔貯留液の分泌型IgA
茂木 五郎
1
,
前田 昇一
1
1山口大学耳鼻咽喉科
pp.646-647
発行日 1978年9月20日
Published Date 1978/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208695
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免疫化学の進歩と相俟つて滲出性中耳炎に関し新知見が得られてきたが,その1つは中耳腔貯留液(MEE)に分泌型IgAが見出されたことであろう。もともと中耳粘膜は内皮細胞様上皮で分泌能はないと見做されてきたが,最近では否定され,第1図のように鼓室耳管開鼻口部は呼吸上皮で,これは胎生期からみられる(第2図)。分泌型IgAは外分泌液中の主要免疫グロブリンで,重合型IgAと分泌因子(SC)が結合してできる。第3図は中耳粘膜におけるIgA産生細胞を示すか,重合型IgA産生細胞も認められる。MEE(第4図)には漿液性,粘液性,膿性などあるが,免疫拡散法で分泌型IgAが検出ざれる(第5図)。第6図は免疫泳動のラジオオートグラフで,MEE中に遊離SCと分泌型IgAが認められる。親和クロマトグラフィー法によつてMEEから分泌型IgAを精製し,第7図に示すように,その構成単位であるSC,H-chain,L-chainの分子量が,他の外分泌液中の分泌型IgAのそれと等しいことを示す。分泌型IgAの濃度はラジオオートグラフィーで測定され(第8図),MEEの全IgAの約12%が分泌型である。
以上の所見から,中耳にも他の呼吸上皮同様分泌型IgAによる粘膜の免疫防禦の働きがあることやMEEのすくなくとも1部は分泌液であることがわかる。
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