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I.はじめに
聴神経腫瘍は内耳道に発生し内耳孔から小脳橋角部へと進展するのが普通であるが,まれに末稍方向に拡がって迷路内に進展したり,迷路内に原発性の腫瘍が発生することがある。このような迷路内聴神経腫瘍にはその存在を疑わせるような特徴的な臨床所見はなく,小さいうちはX線検査やCT検査によっても写し出されないので診断は難しい。とりわけ原発性の場合は一定の大きさに達するまで迷路や内耳道の画像に異常所見を呈さないので診断は非常に困難である。実際これまでの迷路内聴神経腫瘍の報告のほとんどは,迷路摘出術のさいに偶然に発見された1〜8)か,死後の側頭骨病理検査で発見された9〜13)ものである。
今回報告するのは聴神経腫瘍が迷路からさらに中耳腔へと進展していた症例であるが,発見時すでにかなり大きくなっていたので原発部位が内耳道であるか迷路内か確定することは不可能であった。本例は中耳炎の合併がみられたことから3回に分けて摘出術を行ったが,手術後も再発して治療に難渋した。本例の手術所見ならびに治療経過について述べるとともに,迷路内聴神経腫瘍について文献的考察を行ったので報告する。
A 59-year-old house wife with a complaint of right hearing loss and tinnitus for the last 15 years was referred to our clinic because of facial palsy occurred during middle ear surgery which was performed for otitis media at another hospital. Reoperation revealed a middle ear tumor extended from bony defects at the basal turn of the cochlea and at the lateral semicircular canal. The tumor filled in not only the labyrinth but also the in-ternal auditory meatus. Although the tumor was carefully removed by translabyrinthine approach, local recurrence was occurred twice.
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